人生を変える一冊というものがあるらしい。
あれはたしか小学校の図書室にあった貼り紙だったか、視界の端で捉えた『人生を変える一冊』という謳い文句を10年以上たった今でもなぜだか覚えている。あの頃の僕は、本一冊でそんなに変われる訳がない、と気にもしなかった、いや、嘲笑さえしていたように思う。
車内に流れるアナウンスが、次の停車駅が池袋だと告げる。僕は顔を上げ、開いていた小説に栞を挟みバッグにしまった。周りの乗客を見ると各々が限られた自由のなかで思い思いの行動をしている。イヤホンを付け音楽を聴く者、スマホを手に時間を潰している者、目を瞑り眠ったように大人しく到着を待つ者。そんななか、俺と同じように小説を読んでいる男性を見かけた。
間もなくして山手線の電車は緩やかに速度を落とし始めた。暗かった車窓がホームの明かりで満たされていく、到着を待ち望んでいた乗客がなんの示し合わせもなくホーム側の扉へと移動していった。
完全に停車すると扉が開く。先頭から順々に外へと出てゆく人の波に続いて僕も動き出した。そのとき、小説を読んでいた男が顔を上げ、停車している駅の表示を見て驚いた表情を見せた。手に持っている小説をバッグにしまうこともせずに慌てた様子で立ち上がりホームへと飛び出した。
おそらく小説に没頭しすぎたあまり、アナウンスの声すらも聴こえていなかったのだろう。彼がそこまで夢中になる小説とはいったいどんな物語なのだろうか? もしかするとあの小説が、彼にとっての人生を変えるほどの一冊だったのかもしれない。
僕はかつて出会ってしまったのだ。考え方を、価値観を、人生そのものすらをも変えてしまうような衝撃を受ける一冊に……。今でもあの衝撃は鮮明に覚えている、そしてあの衝撃をもう一度、と探し求めているのだ。
池袋駅の東口を出ると目に入ってきたのは電飾で造られたツリーだった。
「もうそんな季節になったのか……」どうりで寒いわけだ、と上着のポケットに手を突っ込む。
街全体に煌々と灯るネオンのせいか、薄い夜のなかそのツリーの輝きは本来の美しさを保てていないように見えた。
「っと、すいません」
サラリーマン風の男と肩がぶつかりよろめく。男はこちらを振り向くことなく足早に雑踏へと姿を消していった。
ぽつねんと立ち尽くしている僕を、人々は気にもせず追い越して、あるいはすれ違っていく。この街は人で溢れていた。今日が金曜日だからか、あるいは池袋という場所はいつもこうなのか、初めてここに来た僕にはわからない。
僕の探し物はここで見つかるだろうか?
スマートフォンを確認する。集合場所は東急ハンズ前でよかったはずだ。メールには「伊坂幸太郎のホワイトラビットを持って待つ」とあった、僕は胸の高鳴りを抑えて歩を進めた。
東急ハンズ前には確かにホワイトラビットを持った人影があった。街を賑わす人混みのなかから、僕を含め数名がその人物に引き寄せられるようにして集まりだす。みんな、僕と同じ探し物を見つけるために集まったのだろうか?
はいっ! ということで第三回小説好きのための読書会が無事開催されました~。(拍手喝采)
どうもっ『小説が好き!の会』のなぜかいつの間にかブログ担当コウイチです。今回のレポートは主催者であるダイチさんから『小説風に』というリクエストを頂いたのですが、もう限界です。いや、頑張った。頑張ったよ、俺っ!
集合場所にたどり着くまでしか書いてないけど、『小説風に』を貫いて書いたとしたらレポート終わんないよ、もはや長編できるレベル。
さてさて、今回は池袋にて開催いたしました! 前回と同じく「貸し会議室」をお借りして、密かにディープな読書会となりました。
参加人数は6名! 平日開催ということもあり、ほとんどの皆さんが仕事終わりでの参加となりました。お疲れ様です! 俺は休みでしたっ!
一応、職業とかもお聞きしたのですが、特殊? というか、でも納得してしまうというか……まあ、個人情報ですのでここではオフレコで。気になる方は会に参加して頂くと解るのではないでしょうか(巧妙なやり口)。
今回は初参加の方が3名も来て頂けたので、いつものように一人づつ自己紹介プラス、今の率直な気持ちと、最近のこだわっていることを言い合うことに。
「今の気持ち」では、緊張しているという人がやっぱり多かったですね。大丈夫ですよ、俺もです。でもなかには緊張以上にわくわくしているという方もおられました。そうなんですよね、俺もです。
「こだわっていること」では、やはり小説好きということもあってか、飲み物に対してのこだわりが皆さんあるようでした(小説好き関係ないな)。
美味しいコーヒーが飲みたいがために、会社にミルを持ち込んだりだとか、自分で抹茶を点てたりだとか、そもそも実家がお茶屋さんだとか。今回はカフェイン中毒者が続出しましたね。皆さん凝り性というかオタク気質な面を持ち合わせているのだと思います。
そんなこんなで自己紹介を終えるとメインイベント、小説の紹介です。
毎回思うのですが皆さんの読書家ぶりがホントに凄いです。好きな作家さんに対する情熱や、これまでの読書量が並外れていて、興味がない人が聴いたらカウンセリングをすすめられかねないですよ。だって好きな作家の新作が出て読みたいのに、好きすぎて読めない! なんていう方も居るんですから……。至急カウンセラーの手配を!
しかしながら好きなものを好きだ! と言える空間は心地のよいものです。読書という趣味は共有化することが難しいものだと思います。時間も掛かるし、そもそも読書って一人でするものですからね。一人で読み耽り、溜めに溜め込んだ感情を衝動を一気に発散させるように、その語り口には確かな熱心と想いが込められていた。僕はその光景に涙さえ浮かべ……あ、小説風に書いてしまった。
えーと、小説の紹介が一通り終わると、残りわずかな時間でテーマトークを行いました。今回のテーマは「ライトノベルの線引きってどこ?」というものです。
確かに難しいところですよね。挿し絵の有無か、レーベルの違いか。最近ではライト文芸なんてジャンルも出てきてますますわからなくなってきています。僕はわりとラノベを読むんですが、ぶっちゃけ解りません。参加者6人で話し合った結果、解らないという結論になりました(笑)
面白ければすべて良し、面白いこそ正義!
かれこれ二時間にわたり、小説トーク、略してノベトーーク! 終了となりました。今回の読書会に来て頂いた皆さま、とても楽しいひとときでした。ありがとうございます。
紹介して頂いた小説は冒頭でも触れたように、人生を変える一冊、そこまで言わなくても皆さんがそれ相応の衝撃を受けた作品なのだと思います。お話しを聴いていただけでも、すぐに読みたくなってしまいました。
そういえば感想で「今から本屋に寄って帰ります」と言った方もいましたね。今回来られなかった方のためにも、文末に紹介された小説たちを載せておきますね。もちろんそれが必ずしも万人に受け入れられる物ではないかも知れない、しかしながら、だからこそ小説は面白いのだと僕は思います。少しでも気になったら、まずは手に取ってみてください。もしかするとその一冊であなたの人生が変わるかも知れませんよ。
こうして第三回小説好きのための読書会は無事閉幕! となるはずもないですよね。なにせ今日は華金ですから! 華の金曜日ですから(死語)!!
近くの居酒屋に場所を移して、乾杯お疲れビール! とどまることなくノベトーーク! かと思いきや、音楽の話しにいったり、大学の話しにいったり。千鳥足よろしく会話が一時ふらふらしてました。でもいいんだっ、お疲れビールが美味しいんだもんっ!
しばらくしてノベトーーク! 路線に戻りディープなお話しをしゃべくりました。会の今後の話しなんかもして、この会が発展していく未来がとても面白そうで楽しみでしかないです。
今回のレポートで読書会の雰囲気が少しでも感じることができましたでしょうか? 参加してみたいと思って頂けたのなら、レポート担当の冥利に尽きます。
そして参加してみたいと思われたそこのあなたっ! 朗報です!!
第四回小説好きのための読書会の開催日が決定しました! 緩く、楽しく、面白く! みんなでノベトーーク! しましょう!!
日にちは12月3日の土曜日、14時からを予定しております。
場所は西荻窪のオシャレなブックカフェだそうです、僕は写真で拝見しただけですが、オシャレでしかなかったです。
また、新システム『天川文庫(仮)』が正式に始動しました。会員から他の人に貸してもいいよっていう小説を募り、主催者(ゆるふわ)管理のもと会員共有の本棚的な素敵システムになっております。
今後も新システム、あるいは新企画を導入していきたいと思っています。会員限定なシステム、企画もあったりするので、是非参加を(巧妙なやり口)。
ではまた次回、お会いできるのを楽しみにしております!
皆さんが紹介してくれた紹介たち!
○「冬の夜ひとりの旅人が」 イタロ・カルヴィーノ
○「やんごとなき読書」 アラン・ベネット
○「木暮荘物語」 三浦 しをん
○「青のフェルマータ」 村山 由佳
○「戻り川心中」 連城 三紀彦
○「東池袋ストレイキャッツ」 杉井 光
○「ホワイトラビット」 伊坂 幸太郎
○「ゼラニウムの庭」 大島 真寿美
○「月と雷」 角田 光代
○「レインツリーの国」 有川 浩
○「夢を与える」 綿矢 りさ
○「深煎り魔女とカフェ・アルトの客人たち」 天見 ひつじ
etc.
小説が好き!の会 【小説に限定した読書会】
小説について話したい、でも周りに小説について話せる人がいない。うまく話せる自信がない、それでも好きな小説について話したい。 そんな人たちのためのくつろぎの場所、それが「小説が好き!の会」です。 小説というのは音楽や映画と違って共有することが難しいかもしれません。だからこそゆっくりと時間をかけて、好きな小説を読んで感じた何かを、少しだけ誰かに話してみませんか? 誰かの感じた何かに触れてみませんか?
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