もう幾つ寝るとお正月です。今年もわずか1ヶ月となってしまいました。今年一年を振り返ってみて、皆さまやり残したことはありますでしょうか? 僕はあります。ありすぎて頭を抱えてしまいます。
ってことで大盛況でしたジャンル別読書会!!
11月10日と、12月2日、二度に渡って実施された新企画。初回は『エンタメ小説が好き!の会』。2回目は『海外小説が好き!の会』でした!
今回初となるジャンル別読書会、第一段はエンタメ小説限定の『エンタメ小説が好き!の会』だったのですが、予想に反して満席御礼でした!
エンタメに限定してしまって人は集まるのだろうか? ジャンル別にする意味ってあるのだろうか? そもそも通常会はかなり認知され始めてるのだから、普段通りに読書会を開けばいいのではないか?
不安はたくさんありました。ビビっていつもとは違う会場にしたりもしました。しかも今回のは主催は僕、コウイチです。レポート係を(半ば無理矢理)任せられて、ずっと適当に戯れ言を並べる作業を繰り返していただけの僕が、まさかの主催……
参加者の皆さま、今一度謝罪を申し上げます。
すいませんでしたー!!
会場も狭いうえに不慣れな司会進行、多くの準備不足にドタバタとした撤収。初参加された皆さまにおきましては、あれが通常とは思わないでください。いつもはもっとまともです……
まぁそれでも今回の成果はたくさんあったので、僕としてはとても嬉しい読書会となりました。
まずはほぼ半数の方が初参加ということ。そもそもジャンル別にしたのも、初参加の方をもっと集めたい、読書会の面白さをもっと広めたいというものでした。エンタメ限定だから参加した、という方もいらしたのでとても喜ばしいかぎりです。
それに僕と同世代の方が非常に多かったですね。いつもは僕が最年少で、年上の方ばかりなのですが、同い年だったり年下だったりする方が何人も来ていただけたのでとても嬉しかったです。
しかも僕と同じく小説を書いている方も! またぜひお話しましょう! 僕は勝手に仲間だと思っていますので!!
紹介された小説は(当たり前ですが)エンタメ一色でこれまでにない雰囲気でした。それぞれが思うエンタメ小説。それを愛している参加者。皆さまの想いがひしひしと伝わる言葉のひとつひとつに、僕の積ん読本がさらなる高みに到達しそうな勢いです。
二次会でもたくさんお話させていただきました。初参加の方や久しぶりに来られた方もいて、話題が尽きることはなかったですね!
エンタメ小説が好き!の会で紹介された小説の一覧!
https://syosetugasuki.amebaownd.com/posts/5182248?categoryIds=917475
お次は『海外小説が好き!の会』です。
我らがホームタウン秋葉原を離れ、会場を渋谷に移し実施。「みんなの会議室」という、なかなか清潔感のある素敵な会場での読書会となりました! エンタメのときと比べると別世界でしたね……
海外小説限定、これこそ普段話す相手の少ないジャンルではないでしょうか?
小説の話ができる相手すら少ないというのに、海外小説ともなるとその数は激減……。かくいう僕も、この読書会に参加するようになるまでは海外小説にはあまり手が出せていませんでした。
そんなピンポイントな読書会。さらに当会、二度目となる課題本を設定。この課題本もメジャーどころではなく、主催のダイチさん趣味丸出しのアンソニー・ドーア『すべての見えない光』という、マニアックセレクト!
エンタメ会よりも、人が集まるのだろうか? という懸念は強かったです。
ですがっ……こちらも大盛況っ!
19名の方々にご参加頂きました!「すべての見えない光」のグループには8名ご参加頂きました!
海外小説限定という、他ではない珍しさに参加を決意したという初参加の方が続々といらっしゃって頂きました。
そして課題本が『すべての見えない光』というセレクトも大当たりだったようで、過去に類を観ないほどに盛り上がったのではないでしょうか。参加者、運営陣、ともに大満足の1日となりました。
「また海外小説限定をやってほしい!」だったり、「課題本を設定してほしい」などの要望も出ました。
ジャンル別読書会はもちろんこれからも定期的に行っていきますが、海外小説限定ははずせないジャンルになってしまいましたね。
皆さまが持ち寄った小説のラインナップを見るだけで、この会に異様さが見てとれるかと思います。エンタメ会とは別のベクトルで凄まじい会となりました!
ほとんどが読んだことのない小説ばかり。なんならタイトルも作者さえも知らなかった小説がいくつも紹介されました。
また、日曜日開催というにも関わらず、二次会の席にも約8割ほどの参加者の方に残って頂き、楽しい時間を過ごさせてもらいました。皆さま、僕なんかとは比べ物にならないくらいの読書量の方たちだったので、僕ももっと読まなくてはなぁと思った次第にございます。
ってなわけで、ジャンル別読書会。どちらとも予想を遥かに越えるご参加、誠にありがとうございました。初めてご参加の皆さまには、当会の雰囲気を少しでも感じ取ってもらえたのならば幸いです。通常会も似たような感じですのでまたご参加頂ければと思います。
渋谷の会場はとても良かったのでまた使わせていただくと思います。でも、個人的には少しだけ困った会場でもありました。
いつものようにスケッチブックを持って、参加者の案内役として外で待機していたのですが、人が多すぎて恥ずかしい。仕方のないことですが、めちゃくちゃ見られました笑
次からは誰かと一緒に立っていたいと思います!
※急募 : 会場の外での案内役
海外小説が好き!の会で紹介された小説の一覧
https://syosetugasuki.amebaownd.com/posts/5354492?categoryIds=917475
~次回予告~
『今年最後の読書会、開催日決定!』
今年度を締めくくる読書会は12月15日に開催となりました。今年一年、読書会を続けてこられたのは参加者の皆さまのお陰です。
最後はやはり通常会をしよう!
ということで、いつも通りの読書会になります。
場所は秋葉原「BOOKS」さん。いつもの場所でいつものように、今年最後の読書会を締めくくりましょう。
たくさんのご参加お待ちしております。
『新年読書会、企画内容決定!』
2019年、初回となる読書会は、今年同様に『my best novel of the year』をやることになりました。
2018年の一年間に読んだ小説のなかで、最も印象に残った小説を持ち寄る読書会です。
2018年に出版された、ではなく、2018年にご自身が読んだ小説のなかで縛りなくフリージャンルの小説が紹介されることを楽しみにしています。
「この小説が好きだ!」その想いを新年一発目に爆発させましょう!!
日程は1月12日を予定しております。現段階では確定していませんので、Peatix、Twitter、Instagram等での報告をお待ちください。
ここからはレポート係コウイチの小説パートとなります。読書会とはまったく関係ないので、暇潰し程度にお付き合いください。お付き合い頂かなくとも大丈夫です。
今回は9月のレポートに載せた『そして彼女は月夜に笑う』の続き的なやつです。
『彼女は二度と傷付かない』
夕暮れに染まる駅前の商店街。駅から溢れてくるスーツ姿の人たちが、この通りにも流れてきていた。私はそのなかにひとり立ち止まって、スマートフォンの画面を呆然と眺めている。
『別れよう』
急に届いた大悟からのメッセージが、私にはうまく理解できなかった。
頭のなかがぐるぐるぐるぐる。このメッセージの意味がわからなくて大混乱を起こしてる。いや違う。意味はわかってるんだ、理解はしてるんだ。だってたった四文字、私が日本人で、大悟は私の恋人で、そんな彼が私に送ってきた簡潔なメッセージ。この意味がわからないほど私はバカじゃない。
だけどそれを認めたくなくて、脳細胞のひとつひとつが拒否反応を起こして、難解な化学式の証明をするみたいに、私に都合のいいありもしない解を探してる。
今日はバイトも休みで、朝から美容室で毛先を整えてもらって、久しぶりに買い物へいって、新しい洋服を奮発して買った。私は背が高くて無口な方だし、表情もあまり変わらないらしいから、さっき買ったグレーのワンピースはけっこう似合ってると思った。
いろんな人から「クールだよね」ってよくいわれるし、初対面の人にはいつも実年齢よりも年上にみられるから、私には大人っぽいファッションが似合うのだそうだ。
あんまりお洒落とかに興味がない私だけど、明日は三週間ぶりに大悟に会える日だからって……。
『どうして?』
いろいろ考えて、自分なりに答えを出そうとして、気付いたときには純粋な疑問を彼に投げ掛けていた。
だって前回のデートだって仲良くしてたし、楽しかったのに。それって私だけだったってこと? 大悟のあの笑顔は嘘だったの?
メッセージの交換も頻繁にしてた、何気ない会話しかなかったけど私は彼とどんどん仲良くなってるって思ってた。それなのにどうして? どこでなにを間違えてしまったの?
ポンっ、既読が付いたと思ったら、別れ話をするにしては軽すぎる電子音とともに大悟からのメッセージが届いた。
『合わないだろ? 俺たち』
──あ────。
ダメだ、これ以上は。離れていってしまう。大悟の背中が、私の好きだった人が、私の手の届かないところへ消え去ってしまう。
ポンっ。
『じゃあな』
待って待って、待ってよ。私は納得なんてしてない、できっこない。
私は慌てて電話帳を開いた。そこから彼の名前を探す。登戸大悟。もともと連絡先を知ってる人なんてそう多くはない。すぐにみつかって電話を掛ける。
プルルっと、着信音が鳴る。大悟と繋がっている糸を私は必死に手繰り寄せる。その音のあとに、大悟の優しい声が聞こえてくるのを信じて。冗談だよって、笑う大悟の声を期待して。
そうして私は怒るんだ、なんでこんなこというの? って怒ってやるんだ。でもそれだけ、また仲直りして、明日になったらなにもなかったみたいに並んで歩いていろんなとこへ二人でいくんだ。
だけど大悟は電話に出ない。
『電話に出て!』
『一度ちゃんと話そう?』
『ねぇ、お願い』
『大悟!』
メッセージには既読も付かなくなってしまった。もう一度電話を掛けてみたけど、すぐに途切れてしまう。
「うそ……着信拒否……?」
もうすでに私と大悟の関係は終わってしまっていたみたいだ。手繰り寄せた糸の先は、途中でぷつりと途切れてどこにも繋がっていなかった。
あまりにも唐突で、大悟ともう別れてしまったなんてまったく信じられない。いまの一連の出来事が全部嘘で、私が寝ぼけて夢をみていただけだったってほうが、まだ現実味がある。
「合わなかったんだ……私たち」
口に出してみた。でもぜんぜん納得はできなかった。私は合ってると思ってた。お互いに口下手だった、でも一緒にいるだけで安心できた。彼は仕事が忙しい人で、私も生活のためにかなりバイトに入ってたから、しょっちゅう会うことはできなかったけど、そのぶん会えたときの喜びはずっと大きかった。
でもそう思ってたのは私だけ。私の一方通行で、自己満足で、いつの間にか彼の心は私から離れていってしまっていた。離れていった? ホントにそう? 最初から彼の心は私に向いていなかったのかもしれない。大悟は優しくて口下手だから、私の前では私の理想の彼氏を演じてくれていただけなのかもしれない。彼の言葉を借りるなら、私たちは合わなかった。そういうことなんだ。
18時28分。スマートフォンに表示された時間が目についた。夕暮れももう終わる。辺りは暗くなりつつあって、肌寒さを感じるようになった。夏が終わって、暑かった日本がこれからどんどん冷めていく。
私は歩き始める。どこに向かおうとか目的はない。ただマンションには帰りたくない、一人になってしまうといろんなことを考えてしまいそうで怖いから。だからといって誰かに会いたいとも思わなかった。一人になりたいけど、一人にはなりたくなかった。
ひとまず駅前のBAR『blue note』に入ることにした。何もかも忘れてしまいたくて、お酒を飲みたいと思った。
店にはジャズのスタンダードナンバー、When You Wish Upon A Starが流れている。邦題は星に願いを。いまの私になにを願えというのか……。
バーカウンターに座る。壁棚に並んだボトルを一通り眺めてからラスティネイルを頼んだ。
スコッチウイスキーをベースに作られたカクテルは度数も高くて、一口飲むだけで喉を熱くさせる。一杯目に頼むお酒じゃないとわかっていながらも、甘いラスティネイルを5分もかけずに飲み干した。喉が焼けてしまいそう。でもこの刺激が胸の痛みを和らげてくれるのなら、と、バーテンダーに同じものを頼む。それすらもすぐに飲み干してしまって、さらに同じものを注文した。
白髪混じりのバーテンダーが3杯目のラスティネイルとともにチェイサーグラスを出してくれた。注がれたのはペリエ。甘いカクテルのチェイサーとしては、水よりも炭酸水のほうがいい。
「失恋ですか?」
「……え?」
顔を上げると深い皺のはいった優しげな瞳が私をみていた。
「辛いことから逃れるためにお酒を飲むというのも悪くはない。ラスティネイルはそういう時に飲むにはもってこいのカクテルです」
初老のバーテンダーはグラスを磨きながら暖かな笑みを口元にたたえている。
「ありがとう、ございます……」
私は俯きがちにお礼をいって、グラスに口をつける。スコッチウイスキーの甘さが口いっぱいに広がっていく。
ラスティネイル。錆びた釘と名付けられたこのお酒のカクテル言葉は……たしか、そう。
「私の苦痛を和らげる……」
ちいさく呟いて、正解を求めるように顔を上げると、もともと細い目を糸のように細くしたバーテンダーが、目尻にたくさんの皺を作ってにこりと微笑み頷いた。
ああ、別れたんだなぁ。そう思った。私は大悟と別れてしまったんだ。彼と付き合い始めてまだ半年しか経っていなかったけれど、初めて心の底から好きになれた相手だと思った。
ちょっと恥ずかしがり屋で、照れ隠しのようにすこし俯いて笑う表情も、いつも私に気を使って歩調を合わせてくれる姿も、全部好きだった。
これまでしてきた恋愛なんてそんなに多くはないけれど、大悟とならこの先も仲良くやっていけると信じていた。
ツーっと、涙が頬を伝う。すこしだけ泣きたかった。
忘れよう。彼のことは。このラスティネイルを飲み干したら、そのときは彼のことなど忘れてしまうときだ。
ペリエを一口挟んで、ラスティネイルのグラスを掴む。
一緒に映画を観たね。お互いに好きだった漫画が原作の映画。
パスタを食べたね。思ってたよりもボリュームがあって、私が食べきれなかったぶんをあなたが食べてくれた。
夏祭りにも行ったよね。人混みではぐれてしまわないように、手を繋いでお神輿とか花火を並んで観たよね。
一緒に目的もなく街を歩いたり、ふらりと立ち寄ったカフェでコーヒーを飲んだり。別れ際にキスをしたり……それから……。
「……ぁ」いつの間にかグラスは空になって、私は彼のことを忘れた。
「ありがとうございました。なんだかスッキリした気がします」
BGMが変わっていた。Take The A Train。新しい一歩を踏み出すにはとても良い曲のように思った。
バーテンダーに声を掛けて席を立とうとする。すると赤いカクテルがカウンターに置かれた。
「メリー・ウィンドウです。こちらはわたしからのサービス」
「え、いいんですか?」
すこし戸惑ってバーテンダーをみる。
「先ほど、辛いことから逃れるためにお酒を飲むのもいいといいましたが、お酒を飲むことの本懐は楽しむことです」
ショートグラスに注がれた赤いカクテル。メリー・ウィンドウ。
バーテンダーはスッと私の目の前にグラスを差し出した。
「お嬢さんに、もう一度素敵な恋を」
了
小説が好き!の会 【小説に限定した読書会】
小説について話したい、でも周りに小説について話せる人がいない。うまく話せる自信がない、それでも好きな小説について話したい。 そんな人たちのためのくつろぎの場所、それが「小説が好き!の会」です。 小説というのは音楽や映画と違って共有することが難しいかもしれません。だからこそゆっくりと時間をかけて、好きな小説を読んで感じた何かを、少しだけ誰かに話してみませんか? 誰かの感じた何かに触れてみませんか?
0コメント