2月
2月。まだまだ寒い季節です。しかしどうでしょう、日常生活のどこかで、ふとした瞬間に春の兆しが顔を覗かせていませんか?
ほら、梅の花のつぼみが少しずつ膨らんでいる。ほら、スーパーに菜の花や春キャベツが並んでいる。
雨が降ると土のにおいが、ふっとほのかに立ち上る。早朝に聴こえてくる鳥のさえずりが、春を呼び寄せているかのよう。
小さな春を見つけては「春よ来い、は~やく来い」と、暖かくなるのを願ってしまいますね。
ってことで2月の読書会も無事開催することができました。どうもレポート係のコウイチです。
2月は通常会をお休みをさせていただきましたが、代わりに小さな会を二度開かせていただきました。
2月20日(水)に、通算三度めとなる「不定期、平日夜の会!」
2月23日(土)に、ジャンル別読書会「青春小説が好き!の会」
立て続けに行われた読書会でしたが、どちらの読書会も12名のご参加をいただきとても楽しい時間となりました。
最近でこそありがたいことに「小説が好き!の会」の知名度も上がり、通常会には毎回30名前後の方にご参加いただけるのですが、この会を始めたばかりの頃は多くても10名ほどしか集まらず細々とした会だったことを覚えています。
だからでしょうか、久しぶりの小規模開催ということで、あの頃をすこし思い出す瞬間がありました。グループを分けて大人数でする読書会ももちろん楽しいのだけれど、たまには今回のように小規模開催もやりたいなぁと感じる二日間でした。
20日の平日夜読書会は渋谷にあるレンタルスペース『みんなの会議室』をお借りして実施。ご参加の皆さま、お仕事終わりにも関わらずわざわざ集まってもらえたことを心から感謝いたします。
自己紹介のさいにするお話のテーマは「日々のちょっとした楽しみ」社会人としてご多忙のなかにある自分だけの楽しみは、他人に理解されようがされまいが、その人にとってほっと一息つける大切な時間なのではないかと思います。
初参加の方も何名かいらっしゃいました。紹介される小説でその人となりがなんとなくみえてきたり、外見とのギャップや独特の考え方が面白かったりと充実した時間になりました。
通常会と比べ参加する人数こそ少なかったですが、時間の密度としてはいつもと変わらない、むしろ濃厚だったような気がします。
一番印象的だったのは、子供の頃に読んだ児童小説を紹介されていた方のお話しでした。
図書室にあった地獄を舞台にした小説、まだ新しいその小説はインクや紙のにおいがほのかにあって、そのにおいが地獄のにおいだと勘違いしていた。というあまりにも素敵すぎる体験談でした。
ぼくの子供のころを思い返しても、そこまで素敵なエピソードはありませんが、たしかに何も知らなかったあのときのことをちょっと微笑ましく思いました。
大人になっていろんなことを知っていくうちに、純粋無垢な発想や思い込みは少なくなってしまったけれど、あの頃の感性がいまなお残っていたのなら、いまのぼくがみている景色は変わっていたのでしょうか?
平日の夜開催ということもあり、いつものように二次会はなくその場で解散という形になりました。もっと話したかったこと、聞いてみたかったこと、たくさん残っています。またぜひ読書会にてお話しをしましょう。小説に向ける情熱を想いを聴かせてください。その時を楽しみにしております!
23日の青春小説が好き!の会は四ッ谷にあるレンタルスペース「ナチュラック四谷駅前店」をお借りして実施。
当日キャンセルもなく、満席での開催ができましたことを心から嬉しく思います。
自己紹介のさいにするお話のテーマは「自分の青春時代について」部活や学校での思い出、友達との思い出、あるいは当時情熱を向けていたものなど、それぞれに忘れられない記憶というものはありますよね。青春時代の記憶というものは、もっとも色褪せないものなのではないかと思いました。
ちなみにこの青春小説が好き!の会、実はレポート係であるぼく、コウイチがしゃしゃり出てきて主催を務めさせていただいた会でもありました。
主催経験は二度目のはずなのですが、今回はいつも主宰をされているダイチさんが不在ということもあってかめちゃくちゃ緊張してしまっていたんですよね。たぶん参加者の方には伝わりましたよね笑
なんなら緊張してるって自分からいってたし……、自分の小説の紹介もぐだぐだになってしまったし……。
上手くいかなかったなぁと反省しつつも、皆さまお優しい方ばかりで「いつもと変わらず良い読書会だった」といっていただいたことが、ぼくにとってはすごく救いになりました。ありがとうございます。
また、ほぼ半数が初参加という会でもありました。初めてなのにぼくの会に当たってしまって申し訳ない、楽しんでいただけたでしょうか?
今回の主題、青春小説限定という限られた条件のなかで、皆さまの感じる「青春」という形がそれぞれにあって充実した会になったのも事実だと思います。
青春時代の自分と重ね合わせてみたり、小説のなかの青春を羨ましいと思ってみたり。他の人と話してみないとわからなかった物語の視点というものが、すこし見えたような気がしました。
人の青春がそれぞれ違うように、小説の読み方、感じ方も人それぞれ。こういう体験をするのであれば課題本形式が一番良いとも思いますが、それだとちょっとハードルが上がってしまうんですよね。でもジャンルの縛りだけならばわりと気軽に楽しめたのではないでしょうか?
またいつの日がジャンル別の読書会もあるかと思うので、楽しみにしていてください!
ぼくがまた主催をやる日もやってくるかもしれませんが……笑
3月の読書会は通常会となっております。日にちは9日、なんだか2月、3月のスパンが短いですね笑
しかもすでにチケットは完売しているのだとか、はやくないですかっ!? 今回は過去最速で定員が埋まったらしいです。皆さまの意気込みが垣間見えて個人的にはとても楽しみです。
読書会に向けてたくさん小説読まなくちゃ!
ではまた、次回会うそのときまで!
ここからはレポート係コウイチによる小説コーナー……と、なるはずだったのですが、今回は趣を変えて詩を書いてみたので、それをいくつか載せようと思います。
そもそもなぜ詩を書いたかというと、先日(というよりこのレポートを書いている現在)ミュージシャンを目指している友人がぼくの家に一週間ほど泊まりにきたのが始まりでした。
ぼくは小説を書いていて、彼は作詞をしている。ならば一緒に詩を書いてみようじゃないか! という流れになり、ともに書くことに。
ぼく自身、小説は読むけれど、詩集などはまともに読んだことが一度もなったので、どうやって書けばいいんだ? と、最初こそはなりましたが、やってみると思いのほか楽しくてずっと二人で遊んでいます。
ですので詩が好きな方が読んでしまうと、これは詩じゃない! なんて思われてしまうかもしれませんが、そこはいつものように生暖かい目で受け流してください笑
ちなみにぼくらがやっている遊び方は、まずタイトルやテーマを決めてから、それに沿って詩を書き始めるというものです。制限時間は30分、すらすら書けるときもあれば、全然書けないときもあって。また、同じタイトルでもお互いにまったく違う詩ができあがるので、自分のものとの読み比べもとても面白いですよ!
皆さんもぜひ一度やってみてください!
煙草
夜空に向かって吐き出す煙草の煙は、儚くも虚空に消えぼくを取り残す。
甘いの香りだけが指先に残り、忘れられない記憶を呼び起こす。
あれは冬の日、あいにくの曇天。真っ暗な公園のベンチでふたりどこかを見詰めてる。
オイルライターを擦る音。ぽっと照らされるキミの横顔。
じりじりと燃える赤い灯火が指先で揺らめいてる。
いまにも雪が降りだしそうな空を見上げて、震える指先がいつもより細く思えた。水蒸気と煙を孕んだ吐息は風にのりキミと戯れる。なのにどうしてキミはあんな顔をしたのだろう?
幾星霜の時を過ごしても消えることのないこの記憶。
一瞬で燃え尽きる煙草のように、外気に溶けゆく紫煙のように、どうかぼくから彼女を消し去ってくれ。
自転車
踏みしめるごとに景色変わる。踏みしめるほどに風はなびく。踏みしめるほどに俺は進む。いつか夢見てたその先へと。
ペダルを回して走るぼくらに、進むべきルートなんて決まっていなくて、確かにあるのは一つの目的地、見失わぬように目ぇかっ開いて。
心臓高鳴る。呼吸も速まる、スピードあげるほどにダメージをくらう。
太ももがパンパンになろうとも、逆風吹き荒れる悪路でも、それでも行きてぇ場所があるから俺がブレーキを握ることはない。
こいつに跨がったときから、決めていたんだ自分の未来。己のバイブスをエンジンに変えて、いつまでも、いつまでも。
珈琲
「ぼくが大人になったなら」なんていつまで思ってたんだろう。
「子供のころにもどれたら」なんていまではそんなこと考える。
あのころに見ていた世界は広大で、親の背中ばかりを追って歩いていた。
転んでしまおうとも、道に迷おうとも、いつも大人が側にいて、手を引いてくれる。
いつの間にか子供だったぼくは大人になって、でもぼく自身は大人になったって自覚はなくて、あのとき見てた大人たちはもっと大人で、だから自分に自信をなくしていく。
辛かったり、苦しかったり、逃げ出しそうになる日々だけど、ふと入った喫茶店の珈琲を美味しいと思えた瞬間に、「ぼくも大人になれたのかな?」なんて考える。
教室
窓側の席の後ろから2番目、椅子を引いて座ってみれば、そこはいっだって華やかな喧騒に包まれる。
昨日あったテレビの話題、週末の遊びにゆく計画、部活や授業のあれこれ、どれをとってもくだらない話。
それでもいまは想う、あの時すべてが宝物。
何年も月日が流れても、色褪せない記憶のひとつ。
大人になったぼくだから、理解できることもあるけれど。あのときのぼくはどれほど、理解できていたのだろうか。
立ち上がると椅子の音が、やけに教室に響きわたる。ひとりぼっち教室は、なんだかちょっと物寂しい。遠くから聴こえるクラリネットに誘われて、廊下へと足を伸ばす。
夕日の差し込む教室をもう一度だけ振り返って、そっと扉を閉じる。
アイスクリーム
とけてしまったアイスクリーム、地面にポタリと滴が落ちる。
とけてしまったアイスクリーム、甘いにおいがほのかに香る。
とけてしまったアイスクリーム、ベタつく汗と火照る身体。
とけてしまったアイスクリーム、困り顔と無邪気な笑顔。
おでこに張りつく髪の毛が、団扇の風で乾いていく。優しく拭われる首筋がすこしくすぐったくて身をよじる。
甘くよごれた小さな手のひらで、木漏れ日を捕まえようと空を掻く。
八の字を描く眉のした、口元には微笑が浮かんでる。
真夏の日差しよりも暖かな眼差し、世界で一番やすらぐその瞳。
草
たとえば大木の根元。
たとえば路傍の片隅。
誰の目にも止まることはないけれど、必ず視界には入ってる。
俺がなりてぇのは大木で、誰もが夢見るランドマーク。
いまの俺は下生えの草、ただ存在してるだけの無価値な草。
いつも上ばかりを見上げては、自分の無力さに落ち込んでる。
だけど下は向いてられない、ただでさえ地面は近いんだ。
雨風に打ちのめされようとも、無慈悲に踏みつけられようとも、無理矢理にだってかまわない、満面の笑みを張りつけてみよう。
だってそうだろう? 暗い顔した奴なんかに、神様は微笑んでくれないだろう?
絵空事の何が悪いの? 誰が無理だと決めつけたの? 誰だって最初はちっぽけな草さ。
この情熱が続くかぎり、www(ワハハ)と笑って今日も明日も上を見る。
なにもなかった
「なぜ誰もが同じことを強制されないといけないんだ?」
昔から調和が嫌いだった、協調性を重んじる現代において彼は間違いなく異質だったのだろう。
社会の秩序に背中を向けて、ひたすらに自由を求めているのだった。
歯車の一部にはなりたくない。皆と同じ方角を向きたくない。
「普通っていったいなんだよ。俺からみたらお前らこそが普通じゃない」
好奇心は人一倍あって、だけど飽きっぽいのも人一倍で、三日坊主と言われながらもその時時を楽しむ破天荒な生き方。
「俺は何者にも染まらない」なんて嘯いて、人の道から外れていく。
縛られたくないと逃げることばかりを考えて、結果的に自分で自分を縛っていたのだ。
そして彼は気づく。歩んできた道になにもなかったと。
彼の空っぽの「ことば」がいまは虚空に哀しく響く。
余裕
花が咲いている。
黄色い花だ。
小さな花が無数に連なって、一つの房が一つの花のようだ。
小魚。たとえば鰯は、群れで行動し、自らを巨大な魚にみせる。あれは天敵から身を守るため、種を残すための先天的行動であると聞いた。
あの黄色い花もその姿に意味があるのだろう。きっと。
受粉をしやすくするためか、危機を分散させるためか、植物に詳しくないために知るよしもないが。
すべての生き物はいつも懸命に生きている。種を残すという一つの目的のために。
もちろん人間だって懸命に生きている。明日を生きるために、未来を育てるために。
けれど自然界に住む彼らとは違って、人間とは実に弱い生き物なのだろう。
懸命に生きるあまりプツリと糸が切れる瞬間があるらしい。切れてしまったその糸は、二度と繋がることはないと知らずに。
あの花は「ギンヨウアカシア」というそうだ。立ち止まってすこし調べるとすぐに解った。
こんなにも便利な世の中になったじゃないか。
懸命に、
懸命に、
余裕を持って。
部屋
いつからこんなに無口になっただろうか。
朝起きて、歯を磨いて、顔を洗い。
朝食を食べて、コーヒーを飲んで、煙草を吸う。
時計をみて、服を着替えて、寝癖を整える。
部屋を出て、靴を履いて、鍵を掛ける。
いつからこんなに無口になっただろうか。
鍵を開けて、靴を脱いで、部屋に入る。
服を脱いで、テレビをつけて、家事をこなす。
羽を伸ばし、飯を食い、煙草を吸う。
風呂にはいり、歯を磨いて、そして寝る。
いつからこんなに無口になっただろうか。
自分以外の生活音が聞こえない部屋。
暗闇のなか、主の帰りを待っているだけの部屋。
おはよう。おやすみ。
ただいま。おかえり。
そんな言葉をいえることがささやかな幸福なのだと気づく。
みるみる
知らないところに行ってみる。
知らないことをやってみる。
知らない人と会ってみる。
知らないものを知ってみる。
「知らない」を減らしてみると、「知らない」が増えていく。
「知らない」があるということを、いままで知らずに生きてきた。
なにも知らないということを、ぼくはいまごろになって知った。
知ったつもりでいた世界が、みるみる広がっていった。
小説が好き!の会 【小説に限定した読書会】
小説について話したい、でも周りに小説について話せる人がいない。うまく話せる自信がない、それでも好きな小説について話したい。 そんな人たちのためのくつろぎの場所、それが「小説が好き!の会」です。 小説というのは音楽や映画と違って共有することが難しいかもしれません。だからこそゆっくりと時間をかけて、好きな小説を読んで感じた何かを、少しだけ誰かに話してみませんか? 誰かの感じた何かに触れてみませんか?
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