当会激推し!ジョン・ウィリアムズ著「STONER」について。

ジョン・ウィリアムズ著「ストーナー」、1965年にアメリカで発表され、2014年に日本で翻訳され第一回日本翻訳大賞を受賞した作品。「完璧に美しい小説」と称され、世界中で静かに愛され始めているこの作品が、当会でもある参加者から紹介され静かなブームになっている、気がしています。そこで今回は既読者数名で「ストーナー」の魅力について語ってみました。少しでも、誰かが、この愛すべき小説を手に取るきっかけになればと願います。
 本文はネタバレというか小説の展開等についても触れてしまいます。しかしこの小説は展開がわかっていても、例えすべてのストーリーを事前に知らせていても、読めば何かが残る小説です。是非ともご一読ください。
 
―まず、ストーナーの魅力について
A:言葉ですよね。さらっと読めてしまうけど、きちんと読み返してみると、言葉のひとつひとつが綺麗過ぎて、ちゃんと自分が受け止められているのかなあって思ってしまうぐらい。
B:感情の流れを丁寧過ぎるぐらい描いているところがあって、本当凄いなあと思いました。特に恋に落ちるところあたり。笑えるぐらい、細かく、気になっていく過程が描かれている。
C:最初に死後のことを描かれているのは、自分の経験上、名作が多い。
D:心理描写よりも場面描写が目に浮かぶぐらい伝わってくる点がいいなあと思った。壁の質感まで見える小説で、言葉がすごい。感情移入よりは場面移入がすごい小説だと感じました。それと人を個性ではなく、在り方で描いている。目の前にいる人をそのまま描いているというか。こういう人は「こうするよなあ」というのが、実在の人物として感じられる。
 
―ストーナーの恋について
C:この小説はいろんな形の恋が描かれていて、最初に文学に恋に落ちて教師を目指し、女性に対しても恋に落ちて。知識に対しても恋だし、女性に対しても恋だし、最後のほうにそれを総括するような文章もできて、うまくまとまっているなあって。
B:あ、そのセンテンス、すごい好きです!
C:ストーナーって農家育ちだし、感情の起伏のない生活のなかで育ってきたのに、誰に対して分け隔てなく接しするし、どこでこの優しさを身に着けたのかなあって思っていたら、最後のところだけ変わっていて。地味なことの積み重ねだけど、ストーナーらしさが結晶になっていて、すごい。
―ストーナーの妻、イーディスについて
B:この夫婦関係が、すごいですよね。
D:すれ違い感がありますよね。
B:ストーナーが悪いわけではないけど、イーディスがすごい不幸な気がします。時代的なものなのか、なんなのかわからないけど、ストーナーの求婚に対してイーディスはあっさり答えてしまう。でも、そのあとの感情の出し方とか生き方が、理解できないレベルに見えるけど、そうするしかなかったのかなあと思ったりもします。
C:私はイーディスが合わなくて。私がこんな奥さん持ったらとしたら、辛すぎる。イーディスがもっと歩み寄ってほしいなあと思った。
A:イーディスは心の準備ができないまま結婚してしまって。それで結婚したあとは、イーディスとストーナーはうまく歩み寄ることができず平行線でしかならない。
D:イーディスは何も知らないから、家庭から逃げ出す方法もわからない。逃げ場所もない。だからストーナーにあたって発散させるしかないし。娘に対しても、支配することでしか自分のなかのぐつぐつしたものを消化できなくなっている。
C:イーディスが途中から社交的になりますよね。描かれていないけど、そのあたりでイーディスは大人になっていて。最後のイーディスってちょっと違うじゃないですか。ストーナーの人生と並行しているイーディスの物語もきっとあって、それが気になります。
A:最初読んだときは完全にストーナー目線で、イーディスのことを理解できなかった。そこまでしなくてもよくない?みたいのがあったけど、2回目読んだとき、ストーナーは結婚当初のときにもっとイーディスの気持ちを考えるべきだったのではないかなあと思って。あまりにも結婚が一方的だったし、最初イーディスは引いていたし、それを示していた。
B:イーディスがストーナーの研究を邪魔するのが一番許せないと思った。それは夫婦のこととは関係ないし、ストーナーが研究を一番大切にしたいと思っているはずだから。でもイーディスの目線に立つとストーナーが一番大切にしたいものだから邪魔したくなったってもの理解できて、そこまで追い込まれていたと思うと同情もしてしまうというか。
C:2人の夫婦関係ってすごいリアルだなあと思って。結局、見切り発車じゃないですか。見切り発車の人間関係にどう責任を取るんだろうなあと思っていたら、うまく責任取れなくて。で、なんかこの感じ、よく知っているというか。実際に存在する関係だなあと思った。うまく始まって、うまく組み立てられていく関係なんてないし。リアルだなあと思いました。
A:あーわかります。イーディスみたいな人って絶対いる。何してもいらっとする人。
 
ー他に感じたこと。 
D:2人の娘が家に戻ってきたときにアルコールに頼っていて、それに対してストーナーはよいことと捉えるシーンがあって、この文学においては、何か頼れるものを持っていることが良いこととされる世界なんだあと思った。
A:章の最後の文が好きなんですよね。次の章に繋がり方が好きというか。ストーナーの今起きていることに対しての感情が描かれているというか。
 
―ストーナー、どんな人にお薦めしたい?
A:人生に漠然とした不安を感じたことがある人に読んで欲しい。なにかが得られると思います。
B:文学が好きな人というよりも、何か自分なりに人には理解されにくくても大切にしているものがある人に読んでもらいたいです。きっと読んでいるうちに響くポイントが必ずあると思います。
C:自分の人生を俯瞰するのは難しいけどその疑似体験ができる小説。なので転機を経験した人とか、少し立ち止まって考える時間のある人に読んでもらいたい。
D:学問好きな方。ストーナーが文学に恋したように、学ことに恋した人は、共感できるところが多いとおもうので。
 
*飲み会の席であり、議論が散らかっておりました。


0コメント

  • 1000 / 1000

小説が好き!の会 【小説に限定した読書会】

小説について話したい、でも周りに小説について話せる人がいない。うまく話せる自信がない、それでも好きな小説について話したい。 そんな人たちのためのくつろぎの場所、それが「小説が好き!の会」です。 小説というのは音楽や映画と違って共有することが難しいかもしれません。だからこそゆっくりと時間をかけて、好きな小説を読んで感じた何かを、少しだけ誰かに話してみませんか? 誰かの感じた何かに触れてみませんか?